「女の叫び」のストーリー

ギリシャの大女優であるマヤ(メリナ・メルクーリ)は、エウリピデスの悲劇「メディア」の大役を得たため、連日、全霊を打ち込んでリハーサルを行なっていた。マヤのメディアは自信に満ちた声音で、嘆きよりはむしろ、正統な怒りを表現していた。演出家のコスタ(アンドレアス・ウツィーナス)は、自分が演出したいと思っているものとはどこか違うこのマヤのアプローチの仕方に、満足いかない何かを感じていた。マヤは、大スターのプライドからか、舞台で自分のまとう衣裳は貧弱なものを使わず、今度の芝居の宣伝工作でも脚光を浴びるようなものを、と考えていた。そこで、宣伝ディレクターのマーガレット(ベティ・ヴァラッシ)が持ち込んだ話しに彼女は大いに乗った。それは、かつて“グリファダのメディア”として、ギリシャ中の新聞を騒がせた子殺しの女ブレンダ(エレン・バースティン)とマヤが会見するというものだった。浮き浮きとしたマヤのそうした気持ちは、しかし、ブレンダとの会見が実現した日から急変した。キャメラマンたちがなだれ込んできた面会室で、マヤを“人でなし”となじるブレンダの憎悪と屈辱を目のあたりにして、メディアはもうマヤにとって観念の産物ではなくなっていた。その日から稽古を休み、新聞社や犯行現場となったブレンダの家を訪れ、彼女の身辺を探るマヤ。アメリカ人で、3人の子供たちと夫の任地であるギリシャに移住したブレンダは、夫に愛人ができた時、子供たちを殺す決心をした。マヤが謝罪に花を差し入れたことから、彼女とブレンダの間が接近し、マヤのメディアに対する感情の出しかたが以前と変わっていった。混乱をきたしたマヤからは、かつての力強い調子は影をひそめ、悲しみと絶望とが前面に出るようになった。コスタの目には、それは陳腐なメロドラマとしか映らない。仲間たちを招いて開いたパーティで、マヤはテレビカメラの前で告白をする。そしてマヤもメディアと同じ1人の女である事を明白にする。初日を翌日に控えた最後のリハーサルに、マヤは姿を現わさず、ブレンダのところで、犯行の夜の告白を聞いていた。ブレンダの“メディア”がマヤの中で再現され、いつしか2人は一体となっていった。夜の円型劇場。観衆を前に姿を現わすメディアは、マヤでありブレンダであった。

今日は映画何の日?

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