「ジプシーのとき」のストーリー

ユーゴスラヴィアの、ジプシーたちの生活する、とある小さな村。ベルハンは不思議な魔法とジプシーの誇りを祖母から授かり受けた心優しい少年だ。カード賭博でベルハンの叔父メルジャンから有り金を巻き上げるような、悪辣なジプシー・アーメドの息子が重い病気にかかり、ベルハンの祖母に助けを求める。祖母が見事に魔術で治療したお礼に、アーメドはベルハンの妹で足の悪いダニラの手術代を負担し町の大病院に連れていくと約束、ベルハンも付き添って町へと出発する。ダニラを入院させると、アーメドはベルハンを連れてイタリアを旅し、ジプシーの“生活の糧”のひとつである盗み、物乞いを教え込む。アーメドに欺され次第に悪に手を染めるベルハンだったが、妹ダニラが病院から姿を消したことを知りアーメドに欺されていたと気づく。その上、故郷に残してきた恋人アズラは妊娠していたが、子どもを産んだあと息を引き取ってしまう。4年後、ベルハンは、行方不明になっていたダニラがアーメドに利用され、また自分の息子も同じように働かされていることを知ってアーメドへの復讐を誓う。そしてアーメドの結婚式の日、魔力でアーメドを殺したベルハンだったが、追いかけてきた花嫁の銃弾に倒れ、常に流されてきた彼のジプシー人生を象徴するかのように、走る列車の上で息絶えた。冷たい死骸となって帰郷した彼の両瞼の上にはしきたり通りに金貨がおかれ、それを彼の息子“ベルハン”が盗んでいく。こうして“ジプシーのとき”は繰り返されてゆくのだった。