「愚なる妻」のストーリー

ここは観楽の都として有名なる地中海に臨む一小国モナコの港モンテカルロである。米国から重要な使命を帯びて来たアンドリュー・ヒューズ夫妻は彼等がここを踏むや否や、既に彼等を狙う悪魔のある事を知らなかった。悪魔とは何者?それはペチニコフ姉妹及び伯爵カラムジンとて露国貴族と称する3人である。彼等は世の眼をだまし自己の悪事を続けるに、ヒューズ夫妻の如き地位のある人々と交際し、世人の信用を得ており、早速悪魔の如きカラムジンがヒューズ夫人に接近した。人の表面のみ信じ、真の性情を知らぬ正直な夫人は、彼を露国の紳士であると信用したのが不覚で、彼女は次第に悪人の奸策に陥ちんとし、悲劇の幕は開かれようとした。要するに彼女は愚なる妻の一人であった。物凄き嵐の一夜、カラムジンに騙されていたメイドにより別荘が炎上、やがて憎むべきカラムジンは横死を遂げる。それらはヒューズ夫人に得がたき人世の教訓を与えた。かくて彼女は、真に自分を愛する夫の腕に抱かれて、危うく難を逃れた事を神に感謝した。