「愛欲の轍」のストーリー
英国インド駐屯軍付の青年士官ジム・ユーラット大尉は休暇を得て帰朝しロンドンに滞在中、ある夜テムズ河岸で投身せんとしていた若い女を救い自宅に伴って介抱したが、女が空腹を訴えるので食物を求めに外出している間に、件の女は置き手紙を残して姿を晦ましていった。彼は気掛かりなので百方捜索したが女の行方は依然として判らなかった。休暇の期限が切れてジムが帰任して見ると隊長ダンガン大佐は本国から年若い新妻を迎えていた。その大佐夫人ルースこそユーラット大尉がテムズ河畔で命を救った当の女だった。恋するともなく彼女を想いつづけていた彼はその皮肉な運命に再会して憂鬱にならざるを得なかった。彼女もジムのことを忘れていなかった。若い2人の心は日に日に結ばれていった。しかし彼女は彼を子の如く愛してくれる隊長の妻であった。ユーラットは遂に決心して他の隊へ転勤することを願った。その隊は原住民の氾濫鎮圧のため奥地に派遣された。ある時英国人の旅行者の一行が原住民に包囲されて一ラマ寺院に非難しているとの報に接したユーラット大尉は急遽救援隊を率いて危険を冒してラマ寺院に到着した。そこにいた旅行者の中には思いがけなく彼が夢寝にも忘れ得ぬルースが居た。2人は死に直面して更に強く愛し合っていることを知った。ところへ突如ダンガン大佐自ら指揮する援隊が到着した。2人の恋はまた遮られようとした。が数奇なる運命は大佐を戦死せしめたのであった。