「再び戦場へ」のストーリー

辺境の蛮族を征討すること五年、大英帝国槍騎兵第二十三連隊は輝かしい武勲を土産に、インドを立って久方ぶりに故国へ帰る。軍用船サマーセットシャー号は望郷の勇士達を乗せて地中海を渡ってジブラルターへ入港した。ジブラルターには連隊の将校下士官の妻が出迎えに来ている。サマーセットシャー号は頓に賑やかに華やぐ。サザムプトン港までの航海はサロンでの音楽とダンスとに彩られるのだ。連隊長ブレア大佐は妻の顔色が勝れないのが心配になる。しかしブレア夫人の健康は大佐の心配以上に悪化している。軍医は手術不可能を宣告したが、夫人は夫に無用の心配をかけたくないので、事実を秘している。大佐のお気に入りの第一中隊長リード大尉は名門の令嬢ジョーンと婚約の間柄で、帰国すれば結婚する手筈になっているが、サマーセットシャー号乗り組みの看護婦アン・ハリスンと相見て以来煩悶している。取りすました貴族の令嬢よりも、純な人間味のあるアンに心を惹かれるのである。アンも大尉を憎からず思ったが、大尉には婚約者ありと知ってことさら大尉によそよそしく振る舞う。大尉の部下のカーター二等兵は直情徑行の熱血児で、サザムプトンの煙草屋の娘エルシーを恋しているが、心変わりをして居はせぬかと気にかかる。ビリングス曹長の妻とブラフ軍曹の妻とは喧嘩友達で、朝から晩まで口論している。所がブラフ夫人が船中で産気づくとビリングス夫人は安産祈祷をするのだ。めでたく産まれた嬰児にはブレア大佐が、船の名をとってサマーセットと命名する。かくてサザムプトンへ近づいた時、無電で命令が来た。「近東に不穏の形勢あり、槍騎兵第二十三連隊はサザムプトン入港後六時間、直ちにアデンへ向け出発せよ」。隊員一同は故郷の土を踏む間もないのだ。その妻や恋人や家族達は、久しぶりに夫や父や兄とゆっくり語る暇もないのだ。陸軍省の特別計らいで、面会の家族や知己の為に特別列車が仕立てられ、六時間の逢瀬を楽しむ人々はサザムプトンの埠頭に集まった。リード大尉はジョーンが大尉の友人ハモンドと恋に陥ちたと聞いて安堵し、自分もアン・ハリスンを恋していると打ち明ける。カーターは嫉妬の為エルシーを殺そうとしたが大尉は妻の容態の真相を知り、これが顔の見納めかと思いながらも再会を約して笑って別れた。「万歳々々」「御無事で凱旋して頂戴」と様々の歓呼の声を後にサマーセットシャー号は出帆した。再び戦場へ……