「死滅の谷」のストーリー

夢の谷間の小さな町、割なしや恋い恋わるる二人の若人、一時も離れ難く暮らして居たが、死の神こそ涙なけれ、男はその誘うままに此の世を去ってしまった。女は斯くて後、丘の上、山の奥、谷の底、焦るる男の跡を追ったが現世になき男に遭わん筈もなく、一日ついに死神に逢った。女は彼にひたすら男を還せと迫ったが、死神は三本の蝋燭の光を人生に例えて、死生命ありいやしくも縮めたり延ばしたりする事は出来ぬ、若し愛の力を以て死に打ち勝てると思うなら、此の蝋燭の物語を聞いて自ら悟れと、第一の蝋燭の、カリフの宮の姫君が満身の恋の力を以てしてもついに死の威力には勝ち得ざりし事、第二本目の語り、フィアメッタ嬢がギョヴァンとの恋を遂げ得ず自ら死期を早めた事や、又第三本目には、中国に場所を取りチャオ・チェンとリヤンの恋が叶わず死の神に征服された実例を挙げて、如何にしても死神には勝てぬ事を納得させた。併し女は尚執念く男の生命を還す方法を問う。此の世に余命ある人から生命を譲って貰ったら男の生命も還せると聞いた彼女は、或いは老年の薬種屋に或いは生甲斐なき乞食爺に生命の譲渡を申し出るが、皆一刻一刻も生命は縮められぬと断った。やむなく男の跡追うて死を決心したが、未だ死期も来らぬ者に死を与える訳にはまいらぬと此も意の如くならず、生命の事は神の命のままなれと諭されたという。

今日は映画何の日?

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