「太陽の誘惑(1960)」のストーリー

伝統の重圧に無気力な生活を送っている、ここ中部イタリアの古都の上流社会。伯爵令嬢ケレの家に集まる若い“二代目”たちのグループも、バカげた情事に明けくれている。実業家の息子で自称詩人アンセルモ(ジェラール・ブラン)その妹エルサ、侯爵の息子で好色なアルベルト、アンセルモの恋人で莫大な遺産をかかえて酒に溺れるマリーナ、エルサの婚約者で工場主の息子シシーノたちだ。ある夜、マリーナが突然発作をおこしたのが縁になって、医師マリオと彼の恋人で上流社会に憧れている娘フェードラ(クラウディア・カルディナーレ)が、このグループに入った。フェードラに眼をつけたアルベルトはたちまち彼女を獲得し、マリオもまたいつかケレの寝室に姿を現わすようになる。内心“民衆の清潔な生活”に憧れているアンセルモは、金と事業に夢中になり出したマリーナに絶望する。一方、エルサは金貸しのリドルフィに接近する。やがて、フェードラはアルベルトの子をみごもったが、彼は彼女に飽きてきた。ある夜、伯爵令嬢ケレは、メキシコへ旅立つため別れのパーティを開いた。その席上、マリオとフェードラが愛し合っているらしいのに気づいたアルベルトは、酔いにまかせてマリオにつかみかかり、はげしい殴り合いが始まる。ところでケレの家には家具ひとつなく、酒屋や服装店からの請求書の山だ。ケレは破産していたのだ。そんなケレの家をとび出したフェードラとマリオは、夜の白むまで街を歩いた。二人は、幸いにも未来のある階級の人間だった。