「リラの門」のストーリー

怠け者で大酒飲み、世にも碌でなしのジュジュ(ピエール・ブラッスール)は、その振舞はともかく、人のいいことでこのリラ(パリ)の街の人々から愛されていた。ジュジュには“芸術家”(ジョルジュ・ブラッサンス)と称する中老の友人があった。二人は隣同士で、ジュジュは老母と妹の三人暮し、芸術家は小屋に一人暮していた。ある朝、この小屋に見知らぬ男--バルビエ(アンリ・ヴィダル)というお尋ね者が逃込んできた。彼は偶然のことから警察に追われ何人かの追手を殺していた。彼の逃走中の行動は新聞に報道されていたが、何も知らないジュジュと芸術家はバルビエを歓待した。が間もなくジュジュと芸術家は自分のしたことが何であるかを知った。しかしバルビエは小屋に腰を落着け高飛びの計画を練り始めた。芸術家は平和な生活に戻りたいため高飛びの実現が早くなることを願った。が、そのうちジュジュは、友人の願いには無頓着、無邪気に尊敬しているバルビエに快適な生活をさせるために精一杯の努力を始めた。この新しい友人のため酒も飲まず、顔をそり、大変な変りようである。その原因を強盗の故とも知らぬジュジュの友人たちは彼の変化を喜んだ。だが変化の原因を知った者がたった一人あった。角のバーの主人アルフォンスの娘マリア(ダニイ・カレル)である。彼女の魅力にとりつかれたジュジュは遂に秘密をうちあけた。しかしマリアはスリラー雑誌の愛読者であるだけに、誰にも言わないというジュジュとの約束を破って、こっそり小屋の英雄に会いに行った。マリアに見つかったバルビエは、彼女が警察に行かないように彼女を篭絡、すっかりその心を掴んでしまった。そして一方で彼はまた、ジュジュを詰問、秘密をばらしたことを白状させて自分の忠実な番犬とした。やがて高飛びのための旅券が手に入り後は金だけ持てばバルビエは逃出すことができることになった。彼はマリアを唆かし彼女の父親の貯えを持出させ一緒に逃げようとした。これを知ったジュジュは驚いた。しかも金だけを目的にバルビエがマリアを誘惑したと知って愕然、必死に計画の変更を頼んだ。が、聞き入れぬバルビエ。彼は邪魔するジュジュにピストルを向けた。夜の闇に銃声三発、しかし死んだのはバルビエだった。