「路上の夜」のストーリー

長距離貨物自動車の運転手シュルタア(ハンス・アルバース)は、夜のアウトバーン(自動車道路)を飛ばしながら、一九五〇〇マルクの大金を拾った。交通事故で死んだ闇業者の金である。ためらったシュルタアは、結局この金を着服してしまった。娘の結婚式にも金はかかったし、このトラックもまだ自分のものではなく、家の年賦も収めきれていないのだ。その金で彼は妻に毛皮の外套を買って帰った。--ある夜、彼はフランクフルトに帰る若い娘インゲ(ヒルデガード・クネフ)を車にのせ、彼女が兄のクルト(マリウス・ゴーリング)と暮している身の上話をきいて心ひかれた。彼女に買い与えた贈物のことから妻と衝突したシュルタアは家を飛出し、偶然インゲに会って彼女の家に案内された。クルトは彼女の兄ではなく、情人であった。ある金庫を襲ってその盗品をシュルタアの車で運ばせようと、インゲを囮りに使ったのである。クルト一味は予定通り、シュルタアにピストルをつきつけて、悪事にまきこもうとした。今や自分の行為を恥じるようになったインゲはシュルタアを救おうとしたが彼は彼女の心など量りうる筈もない。盗品をのせたトラックは脅迫下のシュルタアに運転されて夜の道路を突走り、途中彼は故意に事故を起して一味を警察に引渡すという冒険を敢行した。インゲの自白でシュルタアの無罪は証明され、金の着服もほんの微罪で済んだあと、彼はインゲの愛情を深く心に感じながら、懐しい妻の許へ戻って行った。