「大乱戦」のストーリー

スペインの大蔵大臣サリュスト公爵(L・D・フュネス)は、貧乏人は金持ちのためにあると信じている典型的な貴族で、やたら税金を取り立てては私腹を肥やしていたが、国王(アルベルト・ド・メンドーサ)の税金を横取りするだけでは飽き足らず、スペインをそっくり頂いてしまおうと考えていた。まず王の姪と結婚し、間もなく王は狩で急死、その一族を追放し自分が国王の位につく、これが彼の筋書きだった。ドイツのババリアから輿入れした王妃(K・シューベルト)は、かねがね欲張りで評判の悪い彼を快く思っていなかったが、彼がいよいよ国盗りに乗り出した途端、王を説いて彼を首にし、爵位や財産の没収を言い渡した。だが、こんなことでへこたれるサリュストではない。ハンサムで気立てのいい下男のブラーズ(Y・モンタン)がどうやら王妃に惚れているとみると、さっそく打つ手を考えた。サリュストには、セザール伯(G・ティンティ)という甥があったが、彼は伯父を嫌い、マドリードの市民の中で気ままに暮していた。サリュストはセザールを捕まえ、奴隷としてアラブの酋長に売り渡すと、ブラーズを甥の身代りに仕立て、十年振りにアメリカから帰国したセザール伯と触れ込み、王妃を誘惑させ不倫の現場を王に見させる。一方、国王暗殺の陰謀が王の側近で進められていた。ブラーズはセザール伯として両陛下に拝謁のとき、クッションに仕掛けられた時限爆弾から危く国王の危機を救い、サリュストに代って大蔵大臣に任命された。ブラーズは早速王妃に接近したが、彼の愛の告白は王妃のお目付役のドナ・ファーナ(A・サプリッチ)に届いてしまった。このオールド・ミスは思いがけない愛の言葉にすっかりのぼせ上がった。そんなこととは知らないサリュストは機が熟したとばかり、セザール伯名の逢びきの誘いをおおむに運ばせたが、このおおむは王妃ばかりでなく有頂天の侍女ドナ・ファーナをも誘ってしまったから大混乱。ついにサリュストはアラブの砂漠の苦役に追いやられてしまった。すると間もなくブラーズも砂漠にやってきた。「ドナと結婚するか奴隷か」と詰め寄られ奴隷の方を選んだのだ。だが当のドナもブラーズを砂漠の果てまでも追ってきたので、ブラーズとサリュストのくされ縁で結ばれた主従はここからも逃げ出さなければならなかった。