「雨のパスポート」のストーリー

ロンドンの教会で結婚式をあげたファビアンヌ(M・ジョベール)とハンサムな貿易商人ジョン・フェントンは、東欧ルーマニアへのハネムーンに飛び立った。ルーマニアの首都ブカレストのホテルでの初夜。ところが突然夫が、スパイ容疑でソ連の秘密警察に拉致されてしまったのである。英国大使館に駆け込んだファビアンヌは、さらに空港でモスクワに飛ぶ手続きをとった。ロビーで突然声をかけてきた黒眼鏡の男は、ホテルのボーイだった。誘われるままにウィスキーを飲んだファビアンヌは、次第に意識が薄れていった。麻酔薬だった。気がついた時、ファビアンヌはロンドン行きの機上の人となっていた。夫ジョンの誘拐はソ連の大物スパイ交換のための策謀だったのだ。勝気なファビアンヌは新しいスパイの替玉を見つけようと決心し、早速行動を開始した。ところが自分を尾行する怪しい男を、彼女のボディガードにと英情報局が送ってくれた男と知らず、うまく誘いこんで浴室に閉じこめてしまった。その情報員バクスター(T・コートネイ)はファビアンヌに本気で惚れこんでしまい、彼女のためなら何でもやると誓った。本業の教師に戻ったファビアンヌを、またもや、ボーイに化けていたあの謎の男がつけ狙った。ファビアンヌは逆にこの謎の男を罠にはめこみ、交換用の替玉スパイにでっちあげようとした。ところが、東側のスパイが襲って、二人とも連れ去られてしまったのだ。二人は、うまく脱走してスコットランドの荒野をさまよった。ここで男は初めて正体を明かした。アンドレイ(K・ダグラス)というその男は、スパイではなく、ソ連で発禁の政治家の回想録などを、マイクロフィルムに撮影して持ち出す運び屋だった。ブカレストのホテルでは秘密警察にかこまれ、ファビアンヌの鞄と感違いしてジョンの鞄にマイクロフィルムを隠してしまったのだ。アンドレイとファビアンヌは、静かな船宿に身を隠すうちに、お互いに淡い恋心を抱きはじめた。が、ソ連大使館はアンドレイのマイクロフィムを取り戻すため、彼をソ連のスパイだと名指し、ジョンとの交換を申しこんできた。三八度線の海上、小型モーターボートに乗ったアンドレイとジョンは東と西から次第に接近していった。ファビアンヌの心は微妙に揺れた。アンドレイに抱いた愛の深さをいまさらながら思い知った。その時、アンドレイが叫んだ。「マイクロフィルムはジョンの鞄の中だ」。ジョンは東から報酬をもらっていた二重スパイだったのだ。アンドレイのボートに飛びのったファビアンヌは体当りでジョンのボートを沈ませた。そして見なれない岸へ漂着した二人の運命は……。