「裸足のイサドラ」のストーリー

世界一の美女、天才的ダンサーといわれたイサドラ・ダンカン(V・レッドグレーブ)は、すでに四〇代になっていた。そして今、彼女は秘書のロージャー(J・フレーザー)を相手に波乱万丈の半生記を書いていたのだった。まだ十二才で、ロサンゼルスに往んでいた頃、彼女は美と芸術のために一生を捧げようと誓いをたてた。そして初舞台を踏んだイサドラは、その異様な迫力と熱っぽさで客席を圧倒した。それは「ダンスを波に習い、音楽をそよ風に習った」という彼女の言葉そのままの、野性的な舞踊であった。その後、イサドラは、家族と共にロンドンに渡り、さらに自分の芸術の完成に情熱をそそいだ。そんな彼女に、世間はしだいに注目するようになり、イサドラの名はヨーロッパを風靡するようになった。自由奔放な生活を送るイサドラに、その頃一つの転機となる事件が起きた。その事件とは、詩人で舞台装飾家のゴードン・クレイグ(J・フォックス)と熱烈な恋に落ち入り、娘デアドリー(L・チェンバース)を産んだことだった。が、クレイグは、イサドラのもとを去った。その後、彼女は億万長者のバリス・シンガー(J・ロバーズ)、ピアノ伴奏弾きのアルマン(C・デュバレー)と恋をしたが、彼女を再び燃えたたせたのは、一九二一年、ソ連に渡った時めぐりあったセルゲイ・エセーニン(I・チェンコ)との、恋であった。輝かしいソ連での成功のあと、イサドラとエセーニンは、彼女の故国アメリカに向った。が、アメリカの大衆は、二人を冷やかに迎え、やがて、エセーニンは彼女から去っていった。……回想していたイサドラは、ホテルの窓から、男性的なドライバー、ブガッティ(V・レスコバール)をかいまみて、心魅かれた。数日後、パーティでブガッティをつかまえたイサドラは、彼のオープン・カーに乗りこんだ。車が走り出した時、イサドラは立ちあがりパーティの連中に「さよなら」と呼びかけた。次の瞬間、彼女の首に巻いた赤いスカーフが、車輪にまきこまれ、彼女の首をしめていった。それが、イサドラの最期だった。