「エーゲ海に捧ぐ」のストーリー

ギリシアの片田舎からローマへ絵を学びに来ているニコス(クラウディオ・アリオッティ)は、貧しさと飢えの中で倦怠の日々を送っていたが、籍を置くアカデミアへも通わず、退屈しのぎに向いの部屋に住む娼婦の裸体を覗き見していた。彼の下宿には、30歳を少し過ぎたばかりのエルダ(オルガ・カルラトス)と彼女の妹で幼い時の発熱で聴覚を失い、物言わぬリーザ(サンドラ・ドブリ)と、病身の母親がひっそりと暮していた。そんなある日、エルダとニコスが結ばれ、彼らの愛と性の行為は日毎にエスカレートしていった。ニコスにはかつて、同級生のアン(マリア・ダレッサンドロ)という恋人がいたが、今はエルダに夢中だった。病身の母親が死に、エルダと結婚したニコスは、ひょっとしたことから、名の通った画廊の経営者のダンチオに会うチャンスにめぐまれ、そこで、ダンチオの娘アニタ(イロナ・スターラ)に会い、目が合った瞬間、お互いに何かを感じる。それから、まもなく、ニコスの個展が秋に開かれるという話が進み、アニタは、積極的にニコスを誘ってきた。エルダの目を盗み、アニタとの情事を続けるニコスを、ただひたすら、いつも見つめている者がいた。それはリーザだった。彼女は口に出せないニコスへの想いを、その瞳に秘めていた。リーザを連れていくという口実で、エーゲ海に行く許しをエルダから得たニコスは、アニタと、その友だちでカメラマンのグロリア(S・カッシーニ)とでエーゲ海に向かった。まばゆい陽光のもとで、時が過ぎていった。ニコスは、エルダからの執拗な電話に悩まされていた。「そこに女がいるんでしょう」嫉妬深く聞いてくるエルダの声に、ニコスは何も答えることはできなかった。いつの間にか眠ってしまったニコスが、まどろみからさめると、目の前にピストルを手にしたリーザが立っていた。驚くニコスに、ピストルの引き金がひかれた。“ニコス”はじめて発せられたその言葉はエーゲ海の碧さに吸いとられるように消えていくのだった。

今日は映画何の日?

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