「素晴しき放浪者」のストーリー
セーヌ河畔の本屋の主人レスタンゴワ(シャルル・グランヴァル)が、ブーデュ(ミシェル・シモン)の姿を見たのは、ある小春日和の日の午後だった。妻にはあいそをつかされ、若い女中にうつつを抜かしていたレスタンゴワには、ブーデュの姿が美しくみえた。セーヌに身投げしたブーデュを助け出したレスタンゴワ。だが、ブーデュには救われる気はなかった。自由に生きる放浪者にとって、レスタンゴワ一家は道徳の悪巣であり、逆に一家にとりブーデュは不道徳の化神であった。食事を台無しにし、レスタンゴワと女中の密会を妨害し、家宝のバルザックの初版本に唾をはき、本屋の客を追い返し、夫人すら誘惑する彼。ついにレスタンゴワは解決法--女中アンヌマリ(セブリース・レルシンスカ)とブーデュとの結婚--をおしすすめた。数日後の水辺での披露宴の際中、舟はひっくり返り、新婦やレスタンゴワ夫婦は岸へ上がろうとするが、ブーデュは上がろうとせず、再びどこへともなく流れ去って行くのだった……。