「金瓶梅(1975)」のストーリー

明の時代。ある地方の豪族、西門慶(ヤン・チュン)は野心に燃える男だ。彼は金満家として君臨していたが、実はこれまで貯えた富も、他人の財産を強引に奪いとったり、身辺のならず者たちを使って強盗したりして手に入れたものだった。力の強い者が勝つ、それが西門慶の人生哲学である。彼は己れの哲学に酔い、己れのバラ色の未来を疑いはしない。今日も街をブラブラ歩き、あいまい宿へ行った。そこにはいつものやり手婆が人妻の潘金蓮(チェン・チン)を呼んで西門慶の来訪を今や遅しと待っているはずだった。潘金蓮は訳あって小人の武太郎(チャン・ナン)の妻となっていたのだが、熟れた肉体をもてあます欲求不満の女だった。彼女はいとも簡単に西門慶の金力のトリコになり、陰気な小太郎との生活に戻る気はなかった。そして西門慶のそそのかしもあって武太郎を毒殺してしまうのである。こうして彼女は西門慶の四番目の妾となり、昼夜につぐハレムの狂宴に溺れていく。しかし、何事にも飽きっぽい西門慶は潘金蓮にそろそろうっとうしさを感じ始めた。彼の次のえじきは隣家の花子虚(チェン・チン)の妻季瓶児(タニー)である。目鼻立ちのはっきりした美人でかなりの浮気者。精力的な西門慶に前からかなりの興味をもっていたフシがある。西家で催されたパーティで、花子虚がしたたか酔っ払ってしまうと、彼は季瓶児をものかげで抱く。やがて彼は花子虚が金持ちなのに眼をつけ、財産を横領することを企てた。彼は身内の人間を総動員して花子虚に無実の罪をきせて牢獄にぶち込んだ上、“合法的”に財産を横領することに成功したのである。しかし、あたりまえの性行為では満足しなくなった西門慶は麻薬をつかったりする異常な行為にふけったためか次第に眠れない夜が続くようになった。酒、女、娼薬、麻薬、ありとあらゆる快楽の源が彼の心身をむしばみ始めたのだった。西門慶は薄れゆく意識の中で、地獄をみていた。