「ドイツ・青ざめた母」のストーリー

第二次大戦勃発前のドイツ。ナチス党の活動が活発になってきた頃、ハンス(エルンスト・ヤコビ)とヘレネ(エーファ・マッテス)は結婚した。しかし、ハンスは党員でなかったためにまっ先に徴兵され、ポーランドの最前線ヘ送られてしまった。休暇で帰って来たハンスに、ヘレネは縫いあげたブラウスをみせようとするが、それを乱暴に引き裂くハンス。仲間たちと共に娼婦も買わず、ひたすら妻を想い続けていたハンスは、拒む彼女を見て不貞を隠していると誤解し屈辱的な言葉をヘレネに浴びせた。ハンスは戦場に戻り、ヘレネは空襲の中で女児を生んだ。家を失ったヘレネは、娘を抱えて放浪を始めた。まずべルリンに住む金持ちの叔父の家で幕らすことになり、そこへハンスが再び戻って来た。しかし、娘の面倒に専念するヘレネは、夫とはどこかすれ違う自分を感じた。戦火は激しくなりベルリンは焼かれ、ヘレネはまた放浪の旅へと出た。いたる所にころがる死体をよけて通り抜け、ある廃虚に辿りついたヘレネは、連合軍兵士に輪姦されてしまう。しかし、ヘレネはくじけなかった。戦争が、彼女を気丈な性格に変えていたのだ。こうして、娘を抱えて波乱の人生を送ることになったヘレネの生活も、終戦と共に変わった。ベルリンに戻った彼女は、町で拾ったクズを闇市で売り生計をたてていた。戦場から戻ったハンスは、なおもヘレネに理想的な賢い母、貞淑な妻の姿を求めた。戦争を通じて世の中の厳しさを知ったヘレネにとって、それは耐えがたいことだった。ある朝突然、彼女は片頬が神経麻痺で歪んでいるのに気づいた。ハンス一家は暗く沈んた。そんなある日、疲れきったヘレネは、浴室で自殺を計った。母を呼び続ける娘。不安と緊張の時が過ぎ、やがて、扉が開かれた。泣きじゃくる娘をあやしながら、しかしヘレネは放心状態で遠くを見つめていた。