「作家マゾッホ 愛の日々」のストーリー

19世紀後半のオーストリア。作家のレオポルド・ザッツェル・マゾッホ(パオロ・マルコ)は、彼の作品『毛皮のヴィーナス』のヒロイン、ワンダと同じ名前を名のって彼に手紙を送ってきた女(フランチェスカ・デ・サピオ)に興味をひかれていた。その女は謎めいていて態度は威厳があり、ワンダさながらであり、レオポルドはのめり込んでいった。やがて、二人の間に子供が生まれるが、生まれて間もなくその子は死に、その時に初めて、彼女は自分が今までに結婚したことはなく貧しい家に育った身の上であることを告白した。その意外な女らしさに胸をうたれたレオポルドは、正式に結婚を申し込んだ。子供も生まれ平和な家庭生活が始まるが、レオポルドには想像力を刺戟し挑発してくれる妻が必要だった。無理やりワンダにムチを持たせて自らの肉体を打たせ、ワンダの奴隷のようになることで快感を得るレオポルド。そして、夫の買ってくれた毛皮に身を包み、女王のようにふるまうワンダは、エスカレートしてゆく夫の要求に応じていった。レオポルドはさらに、妻が他の男と関係することで、自分の燃えるような嫉妬に苦しみながら想像力をふるいたたせようとするが、そう簡単にはワンダは承知しなかった。夏が来て、ハンガリーの友人のもとを訪れたマゾッホ一家は久しぶりにのびやかな日々を送るが、馬車の駆者の若者アレクサンダー(ファブリツィオ・ベンティヴォリオ)がワンダに好意を寄せる。一家がオーストリアヘ帰る日が近づいた時、夫の望み通りアレクサンダーを家に招き、彼と愛を交わすワンダ。その姿を扉の鍵穴から覗き歓びを覚えるレオポルド。やがて新しい雑誌の同人になった彼は、編集の仕事をするマーヤと知り合い愛するようになる。雑誌社のオーナー、アルマンに、夫にはないノーマルなやさしさを感じたワンダは、アルマンのもとに走り、しばし穏やかな愛情に身を置くが、いざとなると、レオポルドとは完全に離れられない自分を感じるのであった。そして、アルマンから、レオポルドとマーヤの関係を知り、嫉妬に狂う。今まで、十数年間、夫の意のままに過ごして来たワンダは、夫が他の女から愛を得ることなど考えてもいなかったのだ。しかし、レオポルドの心は、完全にマーヤに傾いており、彼は、離婚裁判を起こした。レオポルドに去られてもなおも、マゾッホ夫人を主張するワンダ。1895年に、レオポルドが死んだ後も、彼女は、マゾッホの創りあげた小説のヒロインのように、ひとり残されてしまうのだった。