「上海異人娼館 チャイナ・ドール」のストーリー

1920年代の終りの中国。上海の娼館“春桃楼”に、“O”(イザベル・イリエ)と呼ばれる美しい女性が、鋭い眼光をもったステファン卿(クラウス・キンスキー)に連れられてやって来た。その娼館は、女主人黒トカゲ(ピーター)によって営まれ、拷問人のスイカ頭の大男や小人など奇異な人間たちが仕えている。姐婦たちによって裸にされた“O”は、化粧され、一室を与えられた。彼女は実はステファンの愛人なのだが、二人の精神的な絶対の愛を碓立するために、彼女は肉体は他人にまかせ、どのような屈辱にも耐える、というステファンとの約束に従ってここに入ったのだ。ステファンは、上海でカジノを経営していた。そこは中国の中の外国--中国人の侵入が許されない治外法権の土地。危険を愛する彼は資金を集める中国人の革命テロリストに金を与える、そして彼は今、愛人ナタリー(アリエル・ドンバール)と共に暮らしていた。ナタリーは“O”の存在を知っていて、嫉妬心を抱いている。“春桃楼”には様々の娼婦たちがいる。愛染(新高けい子)は、元女優だったという記憶のみに生きており、客ともドラマのシーンを演じないとベッドを共にしない。サド専門の少女娼婦、聾唖者を装う咲耶(山口小夜子)。“O”は時々父親の夢を見る。まだ幼ない彼女は父に手をひかれて歩いている。四角い線の囲いの中に“O”を置いて去る父。追おうとしても動けない“O”。ふと父親がふり返ると、それはステファンの顔になる。彼女にとってステファンは父のイメージなのか。“春桃楼”と川をヘだてた位置に無法地帯の貧民街がある。そこの飲食店の息子、王学(中村研一)は、いつも娼館を眺めていたが、“O”の姿に魅了され、いつしか彼女を抱くことを夢みるようになる。ある日、娼館にナタリーを伴ったステファンが現われ、“O”を縛り上げた目の前でナタリーを抱く。これも彼にとっては実験なのだ。上海の情勢が変化をみせ、資金を拒んだステファンに、テロリストたちは逆上し、彼のカジノを破壊する。やがてナタリーが彼から去り、彼には“O”しかいなくなる。なおも賭に挑む彼は、“O”に花束を贈り続けていた王学に彼女を会わせた。少年王学のけなげな姿にうたれ、“O”は初めて心から愛に沈んでゆく。それを陰から見ていたステファンは、“O”の裏切りを感じ怒る。イギリス領事の誕生パーティで、“O”は、ステファンが逮捕されたことを知る。彼は王学を殺害したのだ。失神する“O”。意識がもうろうとする中で、彼女はステファンの声を聞いた。“お前は自由だ、好きなところヘ行くがいい”……。