「愛の太鼓」のストーリー

南米にポルトガルの王が勢力を張っていた頃の物語。封建時代の話である。アルヴィアの一家、当主のカトス公は豪男の聞え高かったが、彼は足が悪くそして極度の背曲りであった。それに引返へ弟のレオナルドは美しい容貌を持っていた、しかしこの2人の兄弟の間には切っても切れぬ愛が流れていた。隣領のグラナダ公とこのアルヴィア公との間には長い争いが続けられていたが、グラナダ公は遂にその抗し難きを覚り、息女のエマヌエルラをカトスに婚せしめて、和議を結ぶことを申し出でた。カトスはその申出を容れ、自分は国事多忙の折とて、弟のレオナルドを使者にと遣はして、エマヌエルラの手を乞はしめた。レオナルドとエマヌエルラとは互に憎からず思った。が、約は動かし難かった。カトスとエマヌエルラとの結婚式は挙げられた。やがてカトスは弟レオナルドに新妻のことを頼んで自身、外敵に当たる可く出征して行った。その留守中、若い2人の間には烈しく情火が燃えさかった。2人は道ならぬ恋に悩んだ。ある夜、レオナルドは遂に去ってその邪道に陥ることから免れやうと最後の別れをエマヌエルラにに告げに行った。その現場へ密告を受けて急いで引返して来たカトスが這入って来た。己れが会て世にも愛していた妻と弟とのこの有様に、カトスの裏切られた憤怒は素凄じかった。彼はこの2人を自らの手にかけた。が、その昂奮が醒めた時、カトスは言い知れぬ淋しさに襲はれるのであった。