「駅馬車(1939)」のストーリー

1885年頃、アリゾナのトントから今のニューメキシコのローズバーグまでの路は、荒野を駅馬車で横切って、たっぷり2日を要した。大男のくせに臆病な馭者バックのあやつる馬車が、今その旅程へ出発しようとしている。ルーシー・マロリーは軍隊にいる夫の許へ行くため、身重の体でヴァージニアから来た若い妻である。ウィスキー行商のピーコックはカンサスにいる妻子の許へ帰る途中だ。呑んだくれの医師ブーンは、宿屋から叩きだされたので瓢然とこの車に乗込む。自ら紳士を以て任じている大賭博師のハットフィールドは、淑女ルーシーに心ひかれ、危険な道中を護衛しようと同乗する。もう1人の女ダラスは、新開地を流れ歩く酒場女で、今日この町の矯風会のお婆さんたちから追立てられ、やむなくこの車に乗った。この一行を護衛するのは警察部長カーリーで、彼は脱獄囚リンゴ・キッドを捕える目的をも持っている。途中はアパッチ族の反乱があって連絡の電信が切断されている。次の駅までブランシャール中尉の率いる騎兵隊が送って行くことになった。トントの町はずれで、黒鞄を大事そうに抱えた銀行家ゲートウッドが乗込んだが、ローズバーグから電報が来たので急行するという彼の言葉に、カーリーは疑いを抱いた。荒漠たる平原を進んでいる時、前方から馬車を止めたのはリンゴ・キッドだった。彼の父と弟を殺した上、彼に濡衣を着せて投獄したブラマー3兄弟を討つため、リンゴはローズバーグへ向かう途中だった。カーリーはともかく彼を馬車に乗せて同行せしめることにした。馬車はドライ・フォークの駅へ着いたが、迎えるはずのルシイの夫は、インディアンの襲撃に逢って負傷しローズバーグへ運ばれていた。ダラスはルーシーやハットフィールドやゲートウッドにさげすまれたが、リンゴはやさしく彼女をいたわってくれた。ここで軍隊と別れ、馬車は護衛もなく不安にかられつつ夕刻アパッチ・ウエルスに着いた。その夜ルーシーが産気づいた。ブーン医師は酔をさまして大奮闘をした。そして無事に女の子が生れたが、ダラスの夜を徹した看護に、ルーシーは己を恥じて感謝の涙を流した。その夜リンゴはダラスに結婚を申込んだ。世間の裏街へ追いこまれた同じ運命が、2人を堅く結びぐけたのである。ダラスは涙の出るほどうれしかったが、彼をカーリーの手から逃すため逃亡をすすめ、自分も後から行くと話すのだった。しかし次の朝、カーリーが逃亡を知って駆付けた時、リンゴはインディアン襲撃の信号を見てカーリーに知らせた。産婦の身を動かすのは危ないが、今は一刻も猶予できない。一行は直ちに馬車を走らせ、不気味な荒野を突切って壊された渡し場を無事に越えた。ホッと一安心した瞬間、矢がピーコックの胸にささり、インディアンの一隊が襲撃して来た。必死に馬車を走らせながら、すさまじい争闘が始まったが、すでに弾丸がつきてしまった。ハットフィールドはせめてもの情けと最後の一発をルーシーに向けた時、原住民の弾丸に当って死んだ。その時救援隊のラッパが聞え彼らはかろうじてローズバーグへ到着した。ルーシーは夫の許へ、ピーコックは病院へ、ハットフィールドは墓地へ運ばれ、ゲートウッドは公金拐帯で警官に拘引された。リンゴは夜の町で見事に3兄弟を射って仇を取り、カーリーの情けでダラスと2人、馬車で国境を越えて新生活へ出発した。

今日は映画何の日?

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