「黄色い大地(1984)」のストーリー

1939年初春。日中戦争が始まって二年目を迎えようとしていた。中国中央部、陝西省北部の寒村に、革命軍の根拠地廷安から民謡の採集のためにひとりの八路軍兵士がやってきた。顧青(王学圻)というその兵士が村に着いた日、村は結婚式でにぎわっていた。しかしそれは花嫁を金銭で買い上げる売買婚なのであった。まだ13歳にも満たない少女の嫁入りは極貧の村では常識とされていた。その儀式をじっと見つめる少女翠巧(薛白)は、次が自分の番だということを知っていた。顧青は、寡黙な父(譚托)と頭の弱い弟・ハンハン(劉強)と三人で暮らす翠巧の家に泊ることになった。顧青の話は翠巧にとってとても新鮮なものだった。廷安の様子、時代の動き、さらに廷安ではもう売買婚などという風習はとっくにすたれ、男女は自分の意志で結婚相手を選ぶと聞いて、翠巧の目は輝いた。翠巧は顧青に民謡を教えた。彼女にとっては今までにない楽しい日々が続く。荒れ果てた黄土地帯にこだまする顧青、翠巧、ハンハンの歌声。姉弟にとって苦しい筈の一里離れた山向こうの黄河への水くみも、この時ばかりは辛くなかった。しかしあっけなく翠巧の縁談が決まり顧青が廷安に帰らなければならない日が近づいた。翠巧は顧青に、廷安に連れていってほしいと哀願したが、軍の規則はそれを許さなかった。顧青は旅立った。翌年4月、翠巧は見知らぬ男と結婚式を挙げた。父や弟のためとはいえ、彼女はこの結婚を受け入れられず、初夜の床を抜け出した。そして、黄河へ小舟を漕ぎ出す。目的地はもちろん廷安だ。しかし、夜の闇の中に彼女の小舟は黄河の濁流にのみこまれていった……。そして6月、顧青が再びやって来た。翠巧たちの名を呼びながら、懐かし気に家を訪ねるが、もはやそこには誰も住んでいなかった。戸口には、翠巧の婚礼の時の色褪せた聨が風にそよいでいるだけだった。村の一角、頭に草の冠をつけた大勢の男たちが地面に頭をすりつけ、雨乞いの祈りをささげている。その中にいたハンハンが顧青の姿を見つけ、大声で名前を呼びながら駆けよってくる……。