「栄光の都」のストーリー

大都会ニューヨークは、若者が青春の夢を、野心をかける栄光の都であるが、夢さめて幻滅の都と化することも少なくない。ここニューヨークのブルックリン区の下町に、四人の少年少女を拾ってみよう。新聞売子のダニー・ケニーは、鼻っ柱の強いそして拳固も堅い少年である。彼にはエディーという弟がある。兄貴のダニーとは似ないで、彼は音楽が好きで、歌っていれば楽しいのだ。隣の少女ペギイ・ナッシュを、ダニーもエディーも好きだ。しかしブルックリン子のペギイは、負けぬ気の喧嘩に強いダニーに好感を持つ。グーギー・ザッコは弱虫である。弱虫のくせにずるい少年である。欲しい物があると、黙ってカッ払うという悪いくせもある。そのくせのためにぶんなぐられたことも、いくたびかある。この四人は、性質はこのように違っていたが、この栄光の都で出世したいという野心を抱いている点では同じであった。十年たった。ダニー・ケニーは両手の拳固が身を助けて、ボクシング家として成功し、チャンピオンにまでなった。ペギイの美しい笑顔と脚線美は、場末の踊り場から彼女をブロードウェイの大舞台へと出世させた。しかし、二人の成功はかえって少年の日の若い愛を結実させなかった。ダニーにコビを呈する女が多かった。ペギイに花束をささげる紳士が、楽屋口に集まった。グーギはすることなすこと功く行かなかった。彼は軽機関銃と短剣でおのれの道を開こうとした。しかし彼が暗黒街の王となるはるか前に、彼の死体がタキシイの中に発見された。ダニーもペギイも、成功の中に孤独を見出だしただけである。エディーは孤独の身を音楽の中に投じた。エディー・ケニイが作曲した交響曲「大都会のうた」が完成した。その初演の夜、聴衆の中にはダニーがいた。ペギイもいた。交響曲は彼らの夢を奏でた。ダニーとペギイはいつか手をにぎり合っていた。

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