ここが見どころ
南木佳士による同名小説を映画化したヒューマンドラマ。末期癌を宣告された山中静夫は、生まれ育った信州の地へ帰り、妻にも内緒で自らの墓を故郷に造り始める。一方、彼を見守る医師・今井は、その思いを遂げさせようと決意するが、自らもうつ病を患ってしまう。出演は「釣りバカ日誌」シリーズの中村梅雀、「名前」の津田寛治、「終わった人」の高畑淳子。監督は「ある取り調べ」の村橋明郎。2019年9月、長野県佐久市にて先行上映。
今すぐ見る
映画専門家レビュー
-
映画評論家
川口敦子
思うままに余命を生きたいというひとりの物語は身につまされる。一方で看取りを誠実に続けることで自身が病んでいく医師の物語、それが映画の核を侵食していくように書き、撮った監督村橋の選択も光る。医師と息子のすれ違っているようで、そうでもない言葉のやりとりも、あざとさと結ばれそうでひやひやさせるが、ゆっくりと染みてくる。人の姿の奇を衒わない切り取り方。そうして死を前にした人が対峙したいといった山の美しさ。撮影監督高間賢治の力も見逃せない。主題歌は要る?
-
映画評論家
佐野享
なんでも暗喩的に描けばよいわけではないが、ここまで直喩的な描写しかないと映画が本来描こうとしているであろう死を前にした患者と医師の心理的葛藤について観客が想像をめぐらす余地がない。立ち止まって見つめるべき風景、頭のなかで反芻し消化すべきことばもスルスルとすり抜けてしまう。ことに医師がうつ病を患ってからの描写は、前半部の風景やことばに十分な重みをもたせていないため、ただ段取りを踏んでいるように見えてしまう。撮影はじめスタッフワークはわるくない。
-
映画評論家
福間健二
南木佳士の小説はどこか頼りない線をたどりながら、誠実さを疑わせない力をもつ。これだけかという内容でも、だ。映画にして大丈夫かと思うが、地味さのよさということがある。村橋監督と高間カメラマン、奇をてらうことない画に人をおく。中村梅雀と津田寛治の、死に向かう患者と自分も病みながら彼を看取る医師。どちらの演技も虚構性を忘れさせる瞬間があった。景色、浅間山がいい。江澤良太の、小説家志望の息子もいい。そしてエンディングの小椋佳、なんていい声だろう。
みんなのレビュー
「山中静夫氏の尊厳死」のレビューを書く
「山中静夫氏の尊厳死」のストーリー
信州の総合病院に勤務する医師・今井俊行(津田寛治)のもとに、静岡の総合病院からの紹介で山中静夫(中村梅雀)という患者がやって来る。山中は自ら肺癌だと口にするが、初診の場で自分が癌であると口にした患者に会うのは今井にとって初めての経験だった。資料によると、山中は腰の骨と肝臓に転移のある腺癌というタイプの肺癌であった。明らかに末期状態であり、予後は一ヶ月から三ヶ月の間と思われた。付き添う家族の負担を考え、今井は山中に今まで通り自宅がある静岡の病院での再治療を勧めるが、山中は「どうせ死ぬんだったら生まれ育った信州の山を見ながら楽に死にたい」と言う。さらに彼は、生まれた村でやっておきたいことがあり、動ける間は病院から外出したいと許可を求めてくる。今井は、決して無理はしないこと、そして夕食までには必ず戻るという条件付きで許可を出す。ところが、長年呼吸器内科を担当し、これまで多くの死を見つめてきた今井は自らもうつ病を患ってしまう。そんななか、毎日病院を抜け出していた山中が、ふる里の村の墓地に自分の墓を造っていることが分り、今井はその思いを遂げさせようと決意する。だが、最期の時は刻々と迫り、山中は穏やかにこの世を去っていく。一人の医師として山中の尊厳死に立ち会った今井は、身も心も極度に疲労していたが、小さな明日への希望のようなものが見えていた……。
「山中静夫氏の尊厳死」の写真
「山中静夫氏の尊厳死」のスペック
基本情報 | |
---|---|
ジャンル | 社会派 ドラマ |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2019 |
公開年月日 | 2020年2月14日 |
上映時間 | 107分 |
製作会社 | 「山中静夫氏の尊厳死」製作委員会(スーパービジョン=アメニティーズ=ベルメールプロモーション)(制作プロダクション:スーパービジョン/企画協力:文藝春秋) |
配給 | マジックアワー=スーパービジョン |
レイティング | 一般映画 |
公式サイト | http://songenshi-movie.com/ |
コピーライト | (C)2019 映画「山中静夫氏の尊厳死」製作委員会 |
「山中静夫氏の尊厳死」のみんなのレビュー
「山中静夫氏の尊厳死」のレビューを書く映画専門家レビュー
今日は映画何の日?
NEW今日誕生日の映画人 2/27
- 佐藤隆太(1980)
-
阪神タイガース THE MOVIE 猛虎神話集
日本のプロ野球球団「阪神タイガース」創設85周年を記念して制作された初の公式ドキュメンタリー。50年に渡る中継素材などを中心に8つの神話と称して伝説的なシーンをセレクト。レジェンドたちの蔵出し映像や新規インタビューを交え、タイガースの魅力に迫る。ナレーションを石坂浩二が担当、ナビゲーターを“ミスター阪神タイガース”掛布雅之が務める。 -
今日も嫌がらせ弁当
人気ブログから生まれたエッセイを原作に、不器用な母娘の実話を篠原涼子主演で映画化。八丈島に暮らすシングルマザーのかおりと、反抗期を迎えた高校生の娘・双葉。話しかけても返事すらしない娘へ逆襲しようと、かおりは双葉の嫌がる“キャラ弁”を作り続ける。共演は「累 かさね」の芳根京子、「輪違屋糸里 京女たちの幕末」の松井玲奈、「DTC 湯けむり純情篇 from HiGH&LOW」の佐藤寛太、「鋼の錬金術師」の佐藤隆太。監督・脚本は「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」「レオン」の塚本連平。
NEW今日命日の映画人 2/27
-
該当する人物がいません