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25歳で早逝した俳人・住宅顕信の人生を、生き辛さを抱えながら生きる現代の中学生と重ね合わせて映し出すヒューマンドラマ。いじめによって掃除用具庫に閉じ込められていた明彦を見つけた教頭の諸岡は、以前、諸岡が関わった生徒・住宅春美について語り始める。出演は「おんなのこきらい」の木口健太、岡山県出身の新鋭・森安奏太。監督は「モバイルハウスのつくりかた」の本田孝義。2019年5月17日より、岡山 シネマクレールにて先行公開。
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映画専門家レビュー
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映画評論家
上野昴志
住宅顕信という俳人を知らなかったが、本作に出てくる彼の自由律の俳句は、かなり面白い。彼の、病気とはいえ、あまりにも生き急いだ短い人生を辿るのというのも興味深い。ただ、それだけでは伝記映画になってしまうので、現代との関係性をつけるために、学校でイジメを受けている中学生を配し、彼が顕信の句に親しむなかで、勇気づけられていくという話を作ったというのもよくわかる。ただ、両者をつなぐ教頭の描き方というか、彼と子どもとの関係が、いまひとつ物足りない感じがする。
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映画評論家
上島春彦
夭折の俳人の最後の十数年をたどるというコンセプトで悪くなかったはずなのに、いじめ問題を不用意に入れ込んで台無しにしてしまった。ここまで教師が無能では、社会からいじめがなくなるわけはない。いじめられる子どもにとって、この俳人の存在が救いになったと思えないのだ。それに元々そういう俳句じゃないだろう。悩む少年を最初と最後だけ提示して、中は評伝風に句の成り立ちと俳人の関係を描くぐらいに留めておくべき。義務教育中の子どもをドロップアウトさせてどうするの。
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映画評論家
吉田伊知郎
静かな佇まいの学生時代から、やがて僧籍を得て病と共生することになる短い時間を描く中で、純粋さを増していく住宅顕信を演じる木口健太が素晴らしい。余計な夾雑物が削ぎ落とされていくかのような表情の変化が良く、病室の限定された空間の中で情熱をあふれさせる演技のスケールに魅せられる。言葉にまつわる映画を作る困難さに正面から向き合うシンプルな構成が功を奏した分、現代のいじめ問題との二重構造がラスト以外では弱く見える。両者と関わる教頭の無能ぶりが気になる。
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「ずぶぬれて犬ころ」のストーリー
2017年、中学生の小堀明彦(森安奏太)は学校でいじめにあっていた。教頭の諸岡は、掃除用具庫に閉じ込められていた明彦を見つけ、教室に落ちていた張り紙「予定は決定ではなく未定である」を書いたのは、以前、諸岡が関わった生徒だったことを語り始める……。その生徒の名は、住宅春美。後の住宅顕信(木口健太)である。春美は高校に進学せず、調理師学校に進んだ。1980年前後、諸岡は、春美が働いていた食堂で彼女を紹介され、その後、商店街で再会。月日は流れ、春美が得度し顕信という法名になり「無量寿庵」という仏間を作ったことを知る……。明彦は、諸岡から借りた住宅顕信の句集『未完成』を読み始め、その俳句と住宅顕信の生涯にのめり込んでいくのだった……。1984年、22歳の住宅顕信は急性骨髄性白血病を発症。家族の献身的な介護に支えられながら、句作に没頭する。だが、病状が悪化し、句集『未完成』の原稿を握り締めながら1987年に25歳の若さで亡くなった。生涯に残した俳句はわずか281句。明彦は住宅の句と生き方に感銘を受け、少しずつ変わっていく……。
「ずぶぬれて犬ころ」の写真
「ずぶぬれて犬ころ」のスペック
基本情報 | |
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ジャンル | 伝記 ドラマ |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2018 |
公開年月日 | 2019年6月1日 |
上映時間 | 100分 |
製作会社 | ケンシン・プロジェクト=戸山創作所 |
配給 | パンドラ |
カラー/サイズ | カラー |
公式サイト | http://www.zubuinu.com/ |
コピーライト | (C)戸山創作所 |
「ずぶぬれて犬ころ」のみんなのレビュー
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