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映画専門家レビュー
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映画評論家
川口敦子
重箱の隅をつつくようで嫌だが、いくら進取の気性に富み夫に合流しようと40代半ば、単身シベリア鉄道でパリを目指すようなお転婆もしたとはいえ、明治時代に東京麹町の商家に生まれ女学校を出て敬虔なクリスチャンでもあった女性が、家庭でこんなふうに媚態を纏っているだろうか? 昨今の着付け教室仕込みの窮屈そうな着方とは違うとしても往時の和装、ここまでぞろりとしていたか? 等々、本筋でない所で鼻白むと映画を愉しめない。リアリズムでない意匠の映画だとしても——。
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映画評論家
佐野享
いまどき珍しいほど観客の教養を信頼したシナリオが快い。北沢楽天ほか実在の人物への敬意を示しつつ、事実に足をとられない自由闊達さで物語を紡ぎ、現在へつないでみせる手つきの自然さ、いやみのなさ。大木萠監督の正攻法の演出、高間賢治の安定した撮影がそれを透明度の高い映像に昇華している。いいね、シブいね、と拍手を送りたくなった。終始飄々としたイッセー尾形、篠原ともえに対して、重の演技で要所を締める唐組の看板役者・稲荷卓央の存在感にも唸った。
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映画評論家
福間健二
ラストの、帽子が飛ぶショット。惜しくも決まりそこなっている。同様に、そこまでも、狙いありでも半端になったり、そもそも歴史への態度が曖昧だったりするところがある。とくに戦争期の人と社会へのつかみが甘い。思い切った見せ方の試みも空振り気味。イッセー尾形の楽天は、起伏を生きぬいてきたと感じさせるが、橋爪遼の演じる青年期との連絡は希薄だ。楽天だけでなく、それぞれに未来をもつ漫画家の群像に対する大木監督の表現者としての思い、もっと出してよかった気がする。
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映画評論家
川口敦子
「色の白いは七難隠す」なんて古い諺があったがこれは女優の輝きで七難隠した快作だ。佐久間由衣のたらこ唇の泣き笑いが、ワンパターンの腐臭に堕す一歩手前で有無をいわせず視線を釘付けにする。その全身的表情の豊かさ。殆んど子役と動物の無敵さにも通じる巧まざる存在の美にあっけなく惹き込まれた。笑いの向こうにじわじわと自身の弱さの受容という真っ当なテーマをせり上がらせて単なる“あるあるもの”の共感ヒロインを超えさせる脚本と演出の助けも見逃せない。
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映画評論家
佐野享
序盤やや平板な空間演出が目立ち、「これはつらいかも」と先行き不安になったが、中盤以降どんどんよくなる。後半は、役者陣が奏でるアンサンブルの心地よさも手伝い、他人事ではない主人公たちの生きた葛藤のドラマに尋常でなく感情を揺さぶられた。ライトなロマコメの殻をまとった心理分析・サイコマジック的な映画が長らくハリウッドの専売特許だったことを思えば、これは大いなる健闘と言うべきだろう。佐久間由衣演じる主人公、ブリジット・ジョーンズのようなアイコンになるかも。
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映画評論家
福間健二
こういう女の子が存在すると押し切る前半。佐久間由衣、緩急、強弱の切りかえが楽しい。くっきり感ある画に、わざとらしくてもホンネ度高いセリフで、複層的な心理表現ができている。そしてシェアハウスの、ヒロインの帰りを待つ二人に味がある。男性たちの描き方から、作品として正解に向かうことへの微妙な不安まで、三木監督は型通りの型をそのままにしない。隠れビッチじゃなくても、これを見て自分を見つめなおしてほしい人がたくさんいそうだと言ったら叱られるだろうか。
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基本情報 | |
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ジャンル | 伝記 アート ドラマ |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2018 |
公開年月日 | 2019年11月30日 |
上映時間 | 118分 |
製作会社 | 映画 『漫画誕生 』 製作 委員会=アースゲート |
配給 | アースゲート |
アスペクト比 | シネマ・スコープ(1:2.35) |
音量 | 5.1ch |
公式サイト | http://mangatanjo.com/ |
コピーライト | (C)漫画誕生製作委員会 |
「漫画誕生」のみんなのレビュー
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今日は映画何の日?
NEW今日誕生日の映画人 1/26
- ポール・ニューマン(1925)
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ミーアキャット
「ディープ・ブルー」「アース」の制作陣による動物ドキュメンタリー。カラハリ砂漠を舞台に、野生のミーアキャットの成長を追う。監督は、ディスカバリー・チャンネルやアニマル・プラネットの番組製作を経て、本作が長編映画初監督となるジェームズ・ハニーボーン。ナレーションは名優ポール・ニューマン。 -
マイ・シネマトグラファー
2度のアカデミー撮影賞を受賞したハスケル・ウェクスラー。彼の実子のマーク・ウェクスラーが、父の伝説と向き合い真の姿を見出そうとして撮ったドキュメンタリー。ジョージ・ルーカス、マイケル・ダグラス、ジュリア・ロバーツ、などの俳優、監督のインタビューを通して伝説のシネマトグラファーの真実を明らかにする。
NEW今日命日の映画人 1/26
- エイブ・ヴィゴーダ(2016)
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アンダーワールド(1996)
自分と父親を陥れた真犯人を見つけるため、正体不明の謎の男に接近する青年のパラノイアックな復讐劇を描いた異色サスペンス。本作の後「マッド・ドッグス」(日本では98年1月公開)で監督デビューも果たしたヴェテラン俳優ラリー・ビショップ(本作で助演も)の脚本を、「スター・ウォーズ」(美術監督としてアカデミー装飾部門最優秀賞を受賞)、『The Sender』(日本未公開、監督作)のロジャー・クリスチャンの監督で映画化。美術はアキ・カウリスマキ監督作品(「ラ・ヴィ・ド・ボエーム」ほか)でも知られるジョン・エブデン。出演は「ネオン・バイブル」のデニス・レアリー、「アンカーウーマン」のジョー・モントーニャ、「フューネラル」のアナベラ・シオラ、「ゴッドファーザー」のアベ・ヴィゴダ、「シリアル・ママ」のトレイシー・ローズほか。 -
シュガー・ヒル
ニューヨーク・ハーレムの暗黒街で、ドラッグ売買のトップにのし上がった2人の兄弟の葛藤を軸に展開する、愛と暴力に彩られたブラック・ムービー。監督はキューバ出身で、カンヌ国際映画祭で上映された「クロスオーバー・ドリーム」やテレビ映画「心臓が凍る瞬間」(日本では劇場公開)などの作品があるレオン・イチャソ。脚本はバリー・マイケル・クーパー。製作は「ラブ・クライム 官能の罠」のルディ・ラングレイスと、グレゴリー・ブラウン。エグゼクティヴ・プロデューサーは「ザ・コミットメンツ」のアーミヤン・バーンスタインとトム・ローゼンバーグ、マーク・エイブラハムズの共同。撮影は「ディープ・カバー」「カリフォルニア(1993)」のボージャン・バゼリ。音楽はテレンス・ブランチャードで、ジャズ、ファンク、ソウル、ラップ、ヒップホップ、ブラック・コンテンポラリー、アフリカン・ミュージックからゴスペルに至るまで、さまざまなブラック・ミュージックの挿入曲が全編に流れる。美術は「再会の時」のマイケル・ヘルミー、主人公兄弟の人物造形や作品世界の上でも重要な要素を占める衣装は、「ディック・トレイシー」のエドゥアルド・カストロで、ヴェルサーチ、ヨージ・ヤマモトなどのスーツが使用されている。主演は「ニュー・ジャック・シティ」「デモリションマン」「ドロップ・ゾーン」など出演作が相次ぐウェズリー・スナイプスと、「ストリーマーズ 若き兵士たちの物語」『ファイブ・ハートビーツ』(V)のマイケル・ライト。「クロウ 飛翔伝説」のアーニー・ハドソン、「ビバリーヒルズ・コップ3」のテレサ・ランドルらが共演。